ラテックスアレルギー ― 手袋のじんましんで終わらせない
天然ゴムの手袋をはめると、15分ほどで手がかゆくなり、赤くなる。
外せば治るので、そのまま何年も使い続けている人がいます。しかしこれは、手術台の上や処置の最中に、重い全身反応として出ることがあるアレルギーです。
【ゴム手袋の「かぶれ」とは別のものです】
・遅い反応(かぶれ):1〜2日してから湿疹。原因はゴムの加硫促進剤(チウラムなど)。調べるのはパッチテスト
・速い反応(ラテックスアレルギー):はめて数分〜30分でかゆみ・じんましん。原因は天然ゴムに含まれるタンパク質。調べるのはプリックテストと特異的IgE
同じ「ゴム手袋で手が荒れる」でも、危険度がまったく違います。速いほうはアナフィラキシーを起こし得ます。
【医療従事者に多い】
フランスの規制当局のもとで行われたメタ解析があります。
・ラテックスアレルギーは医療従事者の4.32%、一般の人の1.37%
・プリックテスト陽性は医療従事者6.9〜7.8%、一般2.1〜3.7%
・ラテックスに曝露している医療従事者は、手の皮膚炎が2.46倍、鼻結膜炎が2.73倍、喘鳴・喘息が1.55倍
日本でも、1993年に最初の報告が出たあと、大学病院の職員を調べた研究で有病率4.6%と報告されています。28例の内訳は看護師20人、医師4人で、大多数が医療従事者でした。
歯科、介護、清掃、食品、それに風船やゴム製品を扱う仕事でも起こります。
【パウダーが犯人でした】
粉付き手袋のパウダー(コーンスターチ)は、ラテックスのタンパク質を吸着します。手袋を外すとパウダーが舞い上がり、タンパク質が空気中に広がって、吸い込まれます。だから、手袋をしていない同じ部屋の人にも起こりました。
ここを変えたら、減りました。
ドイツでは、医療機関にパウダーフリーで低タンパクの手袋を購入するよう求め、教育を行いました。粉付き手袋の購入量が減り始めた2年後の1998年をピークに、ラテックスによる職業性アレルギーの届け出が全国規模で減り続けました。
米国は2016年12月の規則で、粉付き医療用手袋の販売を2017年1月18日から禁止しています。
制度で減らせた病気です。セメントの六価クロムと同じ構図です。
【果物で出ることがあります(ラテックス・フルーツ症候群)】
天然ゴムのタンパク質は、いくつかの果物のタンパク質と似ています。アボカド、バナナ、クリ、キウイが代表です。
ドイツの136人の報告では、
・果物に対するIgE抗体が69.1%で検出されました
・実際に果物を食べて症状が出た人は42.5%
・ただし、症状のある人のうち血液検査が陽性だったのは32.1%にとどまりました
つまり、血液検査だけでは予測できません。症状が出たかどうかを聞くしかありません。職場で覚えたアレルギーが、家の食卓で出る。「仕事で感作されるアナフィラキシー」で書いた順番の、いちばん典型的な例です。
【自分が患者になるときが、いちばん危ない】
粘膜や体の内側にラテックスが触れると、反応は重くなります。手術、内視鏡、歯科治療、内診、カテーテル、浣腸。
診断がついている人は、自分のカルテに書いてもらい、手術や処置の前に必ず申告してください。病院側はラテックスフリーの器材で対応します。日本には「ラテックスアレルギー安全対策ガイドライン2018」(日本ラテックスアレルギー研究会)があり、ラテックスフリー製品の一覧が載っています。
【現場でできること】
・粉付きの天然ゴム手袋を使わない。パウダーフリー・低タンパクのもの、あるいはニトリルへ
・自分ひとりが変えても、同じ部屋の粉付き手袋が残っていれば吸い込みます。部署単位で替える
・手荒れを治しておく。荒れた皮膚は入り口になります
・はめて数分でかゆくなるなら、我慢せず検査を受ける。「外せば治るから」で続けない
・診断がついたら、カルテ・お薬手帳・職場に記録を残す。アドレナリン自己注射薬の適応を相談する
・アボカド、バナナ、クリ、キウイで口がかゆくなったことがないか、思い出しておく
【受診するときに伝えること】
・手袋をはめて何分後に症状が出るか。外すとどうなるか
・手袋の種類(天然ゴムか、粉付きか、ニトリルか)
・風船、ゴム風船、輪ゴム、ゴム手袋以外のゴム製品で症状が出たことがあるか
・果物(アボカド・バナナ・クリ・キウイ)で口やのどがかゆくなるか
・これまでの手術・処置で、原因不明の反応が出たことがあるか
関連記事:職業別-医療従事者/扱うもの別-手袋/仕事で感作されるアナフィラキシー/職業別-清掃・介護
【参考文献】
Bousquet J, et al. Natural rubber latex allergy among health care workers: a systematic review of the evidence. J Allergy Clin Immunol 2006;118(2):447-454.
Mitsuya K, et al. Comprehensive analysis of 28 patients with latex allergy and prevalence of latex sensitization among hospital personnel. J Dermatol 2001;28(8):405-412.
Allmers H, et al. Primary prevention of natural rubber latex allergy in the German health care system through education and intervention. J Allergy Clin Immunol 2002;110(2):318-323.
Brehler R, et al. "Latex-fruit syndrome": frequency of cross-reacting IgE antibodies. Allergy 1997;52(4):404-410.
Pesonen M, et al. Contact urticaria and protein contact dermatitis in the Finnish Register of Occupational Diseases in a period of 12 years. Contact Dermatitis 2020;83(1):1-7.

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