あつかうもの別:手袋(前編)― ゴムとプラスチック、かぶれるのは何か
手袋は手を守る道具です。ところが、仕事のかぶれの原因としても常連です。守るはずの手袋が原因になる。その理由は、手袋の「材料」と「中に入っている薬品」にあります。
【どのくらい起きているか】
スウェーデンの病院で、手湿疹のある医療従事者311人を調べた研究があります。職業性の手湿疹は193人。そのうち11%がアレルギー性で、大半はゴム手袋の添加物に対するアレルギーでした。ゴム添加物のアレルギーは、手湿疹のある人で6%、ない人で1%。著者らは「医療従事者の職業性アレルギー性接触皮膚炎で、いちばん多い原因は医療用手袋のゴム添加物」と結論しています。
フランスの多施設研究では、手袋をつけて働く手湿疹の患者279人のうち、32.6%が手袋そのものか手袋の成分に陽性でした。3人に1人です。
【手袋は2種類に分かれる】
・ゴム手袋:天然ゴム(ラテックス)、ニトリル、クロロプレン(ネオプレン)、ポリイソプレン
・プラスチック手袋:ポリ塩化ビニル(PVC、「ビニール手袋」)、ポリエチレン
かぶれの原因は、この2つで違います。
【ゴム手袋 ― 原因の第一は「加硫促進剤」】
ゴムを弾力のある形に固めるとき、「加硫促進剤」という薬品を使います。これがゴム手袋のかぶれの、いちばん多い原因です。天然ゴムにも合成ゴムにも入っています。「ラテックスフリー」と書いてあっても、加硫促進剤は入っています。
ドイツの皮膚科ネットワーク(IVDK)が、職業性皮膚炎で手袋アレルギーを疑われた3448人を調べたデータです。
・チウラム:13%
・ジチオカルバメート:3.5%
・メルカプトベンゾチアゾール系:3%
・1,3-ジフェニルグアニジン(DPG):3.0%
・チオ尿素:0.4%
チウラムが群を抜いて多い。 日本のパッチテスト標準パネルにも、チウラムミックス、カルバミックス(ジチオカルバメート)、メルカプトミックスが入っていて、この3つはふつうの検査で調べられます。
【DPG ― 「標準パネルで陰性」でも、手袋が原因のことがある】
DPGは、標準パネルに入っていない加硫促進剤です。ところが近年、手術用の滅菌ポリイソプレン手袋を中心に、DPGのかぶれが目立ちます。
スウェーデンの研究では、手術室スタッフ16人のうち、チウラム陽性は8人、DPG陽性は12人でした。手袋を化学分析すると、DPGは手袋の外側より内側に多く含まれていました。手に触れる面です。何十年も同じ仕事をしてきた人が、数か月前から急にかぶれた。原因は、手袋の種類が変わったことでした。
オーストラリアの23年間の記録では、パッチテストを受けた2675人のうち50人(1.9%)がDPG陽性で、直近の4例はいずれも滅菌ポリイソプレン手袋が原因でした。
フランスの研究では、手袋アレルギーの45%は標準パネルでは見つからず、ゴム専用の追加パネルで初めて分かりました。 「標準のパッチテストは陰性でした」で安心しないでください。手袋を疑うなら、ゴム添加物の追加検査と、本人が使っている手袋そのものを貼る検査が要ります。
【ラテックス ― 別の仕組み、別の検査】
天然ゴムのタンパク質(ラテックス)に対するアレルギーは、加硫促進剤とは仕組みがまったく違います。
・加硫促進剤:遅れて出る(つけて1〜2日後に赤く、かゆい)。パッチテストで調べる
・ラテックス:数分で出る(つけてすぐにじんましん、ひどいと息苦しさ)。プリックテストと血液検査で調べる
ラテックスアレルギーは、世界の医療従事者で平均9.7%という報告があります(集計により4〜10%)。詳しくは「ラテックスアレルギー ― 手袋のじんましんで終わらせない」に書きました。
【プラスチック手袋 ― 少ないが、ゼロではない】
PVC手袋とポリエチレン手袋には加硫促進剤が入っていないので、ゴム手袋のアレルギーがある人の代替品として勧められます。かぶれの報告はゴム手袋よりずっと少ない。
ただし、ゼロではありません。PVCを柔らかくする可塑剤や安定剤、たとえばアジピン酸ポリエステル、有機スズ化合物、リン酸トリフェニル、亜リン酸トリフェニルなどでかぶれた報告があります。米国で売られているPVC検査用手袋20種類を分析した研究では、20種類すべてから既知のアレルゲン(ベンゾイソチアゾリノン、ビスフェノールA、リン酸トリフェニル、亜リン酸トリフェニル)が検出されました。量はごく少なく、それで実際にかぶれるかどうかは別問題ですが、「プラスチックだから絶対に大丈夫」ではありません。
これらの成分は標準パネルにないので、疑うときは手袋そのものを貼るパッチテストになります。フランスの研究でも、PVC手袋そのものに陽性の人が4人いました。
【手袋の形に出る】
手袋のかぶれは、手袋の形に一致して赤くなります。手の甲、手首、指の背側。手袋の縁で線を引いたように境目ができることがあります。
ただし、手袋をつける仕事の人は、同時に水仕事もしています。水と洗剤で荒れた手は、手袋の薬品を通しやすくなり、新しくアレルギーを作りやすくなります。「水仕事の手荒れだと思っていたら、手袋のアレルギーが加わっていた」という経過はよくあります。手袋をつけていて荒れるなら、荒れの原因が手袋か、手袋の中の汗か、仕事の水と洗剤か、順に調べる必要があります。
【前編のまとめ】
・ゴム手袋のかぶれの第一の原因は加硫促進剤。「ラテックスフリー」でも入っている
・チウラムが最多。標準パネルで調べられる
・DPGは標準パネルに無い。滅菌ポリイソプレン手袋で増えている。追加パネルと手袋そのものの検査が要る
・ラテックスは数分で出る別のアレルギー。検査も別
・プラスチック手袋はかぶれにくいが、ゼロではない
後編では、どの手袋を選び、どう使うかを書きます。
関連記事:手袋(後編)/ラテックスアレルギー ― 手袋のじんましんで終わらせない/(文献紹介6)「ラテックスフリー」の手袋でもかぶれることがあります/職業別:医療従事者 ― 洗う回数と、手袋の中身/水仕事の手荒れ(前編)/(JBS)チウラムミックス/(JBS)カルバミックス/(JBS)メルカプトミックス
【参考文献】
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