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仕事で感作されるアナフィラキシー ― 職場で覚えたアレルギーが、家の食卓で出ることがあります

natsuko-saito
9月24日
読了時間: 6分

このサイトでは、かぶれ(遅れて出る湿疹)を中心に扱ってきました。

ここでは、その反対側の話をします。触れて数分で起こり、皮膚だけで終わらないことがある反応です。そのなかでも、仕事をしているうちにアレルギーを「覚えてしまう」タイプを取り上げます。

【まず、遅いものと速いものを分けます】

・かぶれ(アレルギー性接触皮膚炎):触れて1〜2日してから、湿疹として出ます。調べるのはパッチテスト

・接触蕁麻疹・タンパク質接触皮膚炎:触れて数分から30分で、かゆみ・赤み・みみず腫れが出ます。調べるのはプリックテストと血液検査

速いほうは、皮膚にとどまらないことがあります。口のかゆみ、くしゃみ、せき、息苦しさ、腹痛、めまい。複数の臓器に及べばアナフィラキシーです。

【「仕事で感作される」とは】

アレルギーは、原因物質に何度も触れるうちに体が「覚える」ことで起こります。これを感作といいます。

ドイツのアレルギー学会は2024年に、職業性アナフィラキシーの考え方を整理しました。ポイントは次の2つです。

・仕事で感作され、職場で反応が出たもの(養蜂家のハチ、調理師の食品など)

・仕事で感作され、職場の外で反応が出たもの

後者も職業性として扱う、としています。職場で覚えたアレルギーが、休日の食卓や病院で出る。この順番があるからです。

【入り口は、荒れた手です】

横浜市立大学の報告があります。同じ食品による接触蕁麻疹が先にあり、その後に食物アレルギーを起こした成人15人を調べたものです。

・15人中14人は、仕事の調理中に接触蕁麻疹が始まっていました

・原因は米、小麦、果物、野菜、魚、エビ、イカなど

・仕事を始めてから接触蕁麻疹が出るまで、平均8.7年

・接触蕁麻疹から、食べて症状が出るまで、平均11か月

・15人中13人(87%)に、アトピー性皮膚炎か手湿疹がありました

・寿司職人の1人は、魚を食べてアナフィラキシーショックを起こしています

手荒れで皮膚のバリアが壊れていると、食品のタンパク質が皮膚から入り、感作が起こりやすくなります。

仕事ではありませんが、日本では加水分解小麦を含む洗顔石けんで小麦アレルギーになった人が多数出ました。皮膚から覚えたアレルギーが、食べて出る。同じしくみです。

【誰に起こりやすいか】

〈調理師・食品加工 ― 魚介・小麦・野菜〉

報告が最も多いのは、魚介を扱う調理師と食品加工の作業者です。魚、エビ、カニ、イカ。小麦粉、そば粉、野菜、果物も原因になります。

生のまま扱う食材ほど感作されやすく、上の15人でも6割は加熱したものなら食べられました。

〈医療従事者 ― ラテックスと消毒薬〉

天然ゴムのラテックス手袋で感作されると、手袋でじんましんが出るだけでなく、手術や処置で粘膜に触れたときに重い反応が起こり得ます。

さらに、ラテックスと似た成分をもつアボカド、バナナ、クリ、キウイを食べて症状が出ることがあります(ラテックス・フルーツ症候群)。職場で覚えたアレルギーが、食卓で出る典型です。

これは減らせます。ドイツでは、医療機関がパウダーフリーで低タンパクの手袋に切り替えた後、ラテックスによる職業性アレルギーの届け出が全国規模で減り続けました。

消毒薬のクロルヘキシジンでも報告があります。20年以上勤めた歯科医師が、職場で重いアナフィラキシーを起こした例です。

〈養蜂 ― ハチ毒〉

養蜂を新しく始めた35人を5年間追跡したギリシャの研究では、29%(10人)がミツバチ毒に感作されました。養蜂をしない人では8%です。

感作された10人は全員、始めて1年半以内に見つかっています。最初の1〜2年が要注意です。

〈実験動物を扱う人 ― かまれて〉

米国の実験動物施設の調査で、ネズミなどにかまれてアナフィラキシーを起こした例が14件集まりました。半数は、それまで動物アレルギーの自覚がありませんでした。

〈屋外で働く人 ― マダニと肉〉

マダニにかまれることで、牛・豚などの肉に含まれる糖(α-Gal)に感作されることがあります。肉を食べて数時間後に、じんましんや腹痛、アナフィラキシーが出ます。

米国の農業従事者201人の調査では、診断がつくまでに平均3回近く受診していました。時間がたってから出るため、肉と結びつかないのです。

【順番に気づけば、止められます】

仕事で感作されるアレルギーは、多くの場合、段階を踏んで進みます。

①手荒れ

②触れたところがすぐかゆくなる、赤くなる(接触蕁麻疹)

③食べたときに口や喉がかゆい

④全身のじんましん、息苦しさ(アナフィラキシー)

②の段階で気づけば、③④へ進む前に手を打てます。「手が荒れているだけ」「かゆいだけ」の段階が、いちばん大事なタイミングです。

また、運動・飲酒・解熱鎮痛薬・寝不足などが重なると、いつもは平気な量で反応が出ることがあります。

【現場でできること】

・手荒れを治しておく。入り口をふさぐことが、いちばんの予防です

・生の魚介や野菜を長時間扱うときは手袋を使う。手袋はラテックスでないもの、パウダーフリーのもの

・触れて数分で出た症状は、その日のうちに記録する。何に触れたか、どこに出たか、何分後か

・一度でも全身症状(息苦しさ、声のかすれ、めまい、腹痛、意識が遠のく)が出たら、次はもっと重くなり得ると考える

・診断を受けた人は、アドレナリン自己注射薬を職場に置き、場所を同僚が知っているようにする

・養蜂やハチの多い屋外作業では、減感作療法の適応を相談する

・屋外作業では、長袖・長ズボンでマダニを防ぐ

【受診するときに伝えること】

・何分後に出たか(これで遅いものと速いものが分かれます)

・仕事の内容と、扱う食材・動物・手袋・消毒薬

・仕事で触れるものと、症状が出たときに食べたもの・触れたものが同じかどうか

・手荒れの有無と、いつからか

・皮膚以外の症状の有無

【最後に】

「手がかゆくなるだけ」と言われてきた人の中に、速い反応の人が混ざっています。そして、それが仕事で覚えたアレルギーであることがあります。

パッチテストだけでは見つかりません。数分で出るかどうか、そして仕事で触れているものと同じかどうかを、ぜひ確かめてください。

関連記事:(文献紹介16)漁師の皮膚に何が起きているか/(文献紹介17)食品を扱う人の21年間/職業別-医療従事者/扱うもの別-手袋/職業別-調理師

【参考文献】

Treudler R, et al. Occupational anaphylaxis: A Position Paper of the German Society of Allergology and Clinical Immunology (DGAKI). Allergol Select 2024;8:407-424.

Treudler R. Occupational anaphylaxis: a comprehensive review. Curr Opin Allergy Clin Immunol 2026;26(2):107-112.

Inomata N, et al. Food allergy preceded by contact urticaria due to the same food: involvement of epicutaneous sensitization in food allergy. Allergol Int 2015;64(1):73-78.

Fukutomi Y. Occupational food allergy. Curr Opin Allergy Clin Immunol 2019;19(3):243-248.

Chinuki Y, Morita E. Wheat-dependent exercise-induced anaphylaxis sensitized with hydrolyzed wheat protein in soap. Allergol Int 2012;61(4):529-537.

Allmers H, et al. Primary prevention of natural rubber latex allergy in the German health care system through education and intervention. J Allergy Clin Immunol 2002;110(2):318-323.

Toletone A, et al. Chlorhexidine-induced anaphylaxis occurring in the workplace in a health-care worker: case report and review of the literature. Med Lav 2018;109(1):68-76.

Kalogeromitros D, et al. Pattern of sensitization to honeybee venom in beekeepers: a 5-year prospective study. Allergy Asthma Proc 2006;27(5):383-387.

Stave GM, et al. Laboratory Animal Bite Anaphylaxis: A National Survey: Part 1: Case Series and Review of the Literature. J Occup Environ Med 2017;59(8):728-738.

Welch AM, et al. Alpha-Gal Syndrome Symptom Profiles and Diagnostic Experiences Among Farmers and Ranchers. J Agromedicine 2026 (online ahead of print).

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