数分で出る反応を、どう調べるか ― 食品を扱う人の検査の話
「パッチテストは陰性でした」
食品を扱う人の手荒れで、ここで止まってしまうことがあります。調べる検査が違っているかもしれません。
【まず、時間で分けます】
・1〜2日してから湿疹が出る → かぶれ(アレルギー性接触皮膚炎)。調べるのはパッチテスト
・数分から30分でかゆみ・赤み・みみず腫れ → 接触蕁麻疹。調べるのはプリックテストと特異的IgE
この2つは別の検査です。パッチテストで接触蕁麻疹は見つかりません。
そして、その中間のような顔をしたものがあります。
【タンパク質接触皮膚炎という、まぎらわしいもの】
見た目は慢性の手湿疹です。しかし正体は速い反応で、触れた直後にチクチク・ピリピリしてから、あとで湿疹になります。
フランスからの報告に、特徴がよくまとまっています。
・慢性の湿疹で、仕事で悪くなる
・爪のまわりの炎症(爪囲炎)を伴うことが多い
・休み明けに仕事へ戻ったときに悪化する
・パッチテストは陰性。プリックテストが必須
・患者の56〜68%にアトピー素因があります
「治らない手湿疹」として何年も通っている人の中に、これが混ざっています。
【誰に多いか ― フィンランドの登録データ】
フィンランドは職業病を国の登録で追いかけています。2005〜2016年の12年間のデータです。
・接触蕁麻疹とタンパク質接触皮膚炎は570例。職業性皮膚疾患全体の11%を占めました
・多い職種は、パン職人、調理師、農業従事者、獣医、園芸、美容師
・原因で多いのは牛のフケ(フィンランド特有です)と小麦粉などの粉、次いで天然ゴムラテックス
・食品関係の仕事では、小麦などの粉が76例と圧倒的でした。魚など動物性の食品が33例、植物性の食品が23例
魚介の印象が強いところですが、数のうえでは粉です。
【皮膚だけで終わらないことがあります】
同じ登録の2005〜2020年(2413例)の解析では、接触蕁麻疹・タンパク質接触皮膚炎の27%に職業性の喘息か鼻炎が合併していました。逆に、職業性喘息の10%、職業性鼻炎の14%に皮膚症状がありました。
そして、89%で原因物質が皮膚と気道で共通でした。
手が荒れている人に、せきや鼻水が続いていないか。ここを一緒に聞く意味があります。
【検査の実際】
〈プリックテスト〉
疑う物質を皮膚にのせて、細い針で軽く刺します。15分で判定します。
食品では、市販の試薬よりその人が実際に扱っている食材そのもの(prick-by-prick法)のほうが陽性に出ることがあります。魚、エビ、野菜、果物、粉。仕事で使っているものを持参してもらうことがあります。
ただし、接触蕁麻疹の人はごく微量で反応します。濃い原液でいきなり行わず、薄めたものから慎重に進めます。検査そのもので全身反応が出ることがあるためです。設備のある施設で受けてください。
〈特異的IgE〉
血液検査です。複数に陽性が出て解釈に迷うときは、コンポーネント(成分ごとの検査)が役に立ちます。
〈注意〉
検査が陰性でも、症状が仕事と結びついているなら否定はできません。「触れて何分後に、どこに出たか」という病歴が、いちばん強い証拠です。
【現場でできること】
・触れて数分で出た症状は、その日のうちに記録する(何に、どこに、何分後に、どのくらい続いたか)
・手荒れを治しておく。荒れた皮膚は、タンパク質の入り口になります
・生の食材を長時間扱うときは手袋。内側が濡れたら替える
・せき・鼻水・目のかゆみが仕事中に出ていないか、意識して観察する
・仕事を離れた日に軽くなるかどうかを見る
【受診するときに伝えること】
・触れてから何分後に出たか
・扱っている食材の一覧(粉ものを忘れずに)
・爪のまわりが腫れるか、仕事復帰の直後に悪くなるか
・食べたときに口やのどがかゆくなるものがあるか
・喘息・花粉症・アトピー性皮膚炎の有無
関連記事:(文献紹介17)食品を扱う人の21年間/(文献紹介16)漁師の皮膚に何が起きているか/あつかうもの別-魚介類/あつかうもの別-野菜・果物/仕事で感作されるアナフィラキシー
【参考文献】
Pesonen M, et al. Contact urticaria and protein contact dermatitis in the Finnish Register of Occupational Diseases in a period of 12 years. Contact Dermatitis 2020;83(1):1-7.
Ojanen V, et al. Occupational Contact Urticaria, Protein Contact Dermatitis and Concomitant Airway Diseases in the Finnish Register of Occupational Diseases in 2005-2020. Contact Dermatitis 2026;95(1):74-85.
Barbaud A, et al. Occupational protein contact dermatitis. Eur J Dermatol 2015;25(6):527-534.
Lukács J, et al. Occupational contact urticaria caused by food - a systematic clinical review. Contact Dermatitis 2016;75(4):195-204.
Inomata N, et al. Food allergy preceded by contact urticaria due to the same food: involvement of epicutaneous sensitization in food allergy. Allergol Int 2015;64(1):73-78.

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