top of page

数分で出る反応を、どう調べるか ― 食品を扱う人の検査の話

natsuko-saito
9月26日
読了時間: 4分

「パッチテストは陰性でした」

食品を扱う人の手荒れで、ここで止まってしまうことがあります。調べる検査が違っているかもしれません。

【まず、時間で分けます】

・1〜2日してから湿疹が出る → かぶれ(アレルギー性接触皮膚炎)。調べるのはパッチテスト

・数分から30分でかゆみ・赤み・みみず腫れ → 接触蕁麻疹。調べるのはプリックテストと特異的IgE

この2つは別の検査です。パッチテストで接触蕁麻疹は見つかりません。

そして、その中間のような顔をしたものがあります。

【タンパク質接触皮膚炎という、まぎらわしいもの】

見た目は慢性の手湿疹です。しかし正体は速い反応で、触れた直後にチクチク・ピリピリしてから、あとで湿疹になります。

フランスからの報告に、特徴がよくまとまっています。

・慢性の湿疹で、仕事で悪くなる

・爪のまわりの炎症(爪囲炎)を伴うことが多い

・休み明けに仕事へ戻ったときに悪化する

・パッチテストは陰性。プリックテストが必須

・患者の56〜68%にアトピー素因があります

「治らない手湿疹」として何年も通っている人の中に、これが混ざっています。

【誰に多いか ― フィンランドの登録データ】

フィンランドは職業病を国の登録で追いかけています。2005〜2016年の12年間のデータです。

・接触蕁麻疹とタンパク質接触皮膚炎は570例。職業性皮膚疾患全体の11%を占めました

・多い職種は、パン職人、調理師、農業従事者、獣医、園芸、美容師

・原因で多いのは牛のフケ(フィンランド特有です)と小麦粉などの粉、次いで天然ゴムラテックス

・食品関係の仕事では、小麦などの粉が76例と圧倒的でした。魚など動物性の食品が33例、植物性の食品が23例

魚介の印象が強いところですが、数のうえでは粉です。

【皮膚だけで終わらないことがあります】

同じ登録の2005〜2020年(2413例)の解析では、接触蕁麻疹・タンパク質接触皮膚炎の27%に職業性の喘息か鼻炎が合併していました。逆に、職業性喘息の10%、職業性鼻炎の14%に皮膚症状がありました。

そして、89%で原因物質が皮膚と気道で共通でした。

手が荒れている人に、せきや鼻水が続いていないか。ここを一緒に聞く意味があります。

【検査の実際】

〈プリックテスト〉

疑う物質を皮膚にのせて、細い針で軽く刺します。15分で判定します。

食品では、市販の試薬よりその人が実際に扱っている食材そのもの(prick-by-prick法)のほうが陽性に出ることがあります。魚、エビ、野菜、果物、粉。仕事で使っているものを持参してもらうことがあります。

ただし、接触蕁麻疹の人はごく微量で反応します。濃い原液でいきなり行わず、薄めたものから慎重に進めます。検査そのもので全身反応が出ることがあるためです。設備のある施設で受けてください。

〈特異的IgE〉

血液検査です。複数に陽性が出て解釈に迷うときは、コンポーネント(成分ごとの検査)が役に立ちます。

〈注意〉

検査が陰性でも、症状が仕事と結びついているなら否定はできません。「触れて何分後に、どこに出たか」という病歴が、いちばん強い証拠です。

【現場でできること】

・触れて数分で出た症状は、その日のうちに記録する(何に、どこに、何分後に、どのくらい続いたか)

・手荒れを治しておく。荒れた皮膚は、タンパク質の入り口になります

・生の食材を長時間扱うときは手袋。内側が濡れたら替える

・せき・鼻水・目のかゆみが仕事中に出ていないか、意識して観察する

・仕事を離れた日に軽くなるかどうかを見る

【受診するときに伝えること】

・触れてから何分後に出たか

・扱っている食材の一覧(粉ものを忘れずに)

・爪のまわりが腫れるか、仕事復帰の直後に悪くなるか

・食べたときに口やのどがかゆくなるものがあるか

・喘息・花粉症・アトピー性皮膚炎の有無

関連記事:(文献紹介17)食品を扱う人の21年間/(文献紹介16)漁師の皮膚に何が起きているか/あつかうもの別-魚介類/あつかうもの別-野菜・果物/仕事で感作されるアナフィラキシー

【参考文献】

Pesonen M, et al. Contact urticaria and protein contact dermatitis in the Finnish Register of Occupational Diseases in a period of 12 years. Contact Dermatitis 2020;83(1):1-7.

Ojanen V, et al. Occupational Contact Urticaria, Protein Contact Dermatitis and Concomitant Airway Diseases in the Finnish Register of Occupational Diseases in 2005-2020. Contact Dermatitis 2026;95(1):74-85.

Barbaud A, et al. Occupational protein contact dermatitis. Eur J Dermatol 2015;25(6):527-534.

Lukács J, et al. Occupational contact urticaria caused by food - a systematic clinical review. Contact Dermatitis 2016;75(4):195-204.

Inomata N, et al. Food allergy preceded by contact urticaria due to the same food: involvement of epicutaneous sensitization in food allergy. Allergol Int 2015;64(1):73-78.

最新記事

すべて表示
屋外で働く人 ― 刺されて覚えるアレルギー(ハチとマダニ)

屋外の仕事には、刺されることで覚えるアレルギーがあります。ハチは前回まで平気だった人にも全身反応が起こり、養蜂では始めて1年半以内に感作されます。マダニに刺されると赤身肉のアレルギーになり、食べて3〜6時間後に出るため肉と結びつきません。ドイツの森林作業員では35%が感作されていました。

 
 
 
ラテックスアレルギー ― 手袋のじんましんで終わらせない

ゴム手袋で手が荒れるとき、1〜2日してからの湿疹と、はめて数分でのじんましんはまったく別ものです。後者は天然ゴムのタンパク質によるもので、手術や処置の最中に重い全身反応を起こすことがあります。医療従事者の有病率は4.32%。パウダーフリー手袋への切り替えで、ドイツでは届け出が全国規模で減りました。

 
 
 

コメント


logo_w01.png

産業医科大学 医学部 皮膚科学教室

〒807-8555 北九州市八幡西区医生ヶ丘1-1

TEL:093-691-7445

FAX:093-691-0907

E-MAIL:dermatol@mbox.med.uoeh-u.ac.jp

患者様の症状等のご相談、病院のご紹介等にはお答えすることが出来ませんのでご了承ください。

文責:産業医科大学・皮膚科学教室

Copyright(C) 2019 Department of Dermatology, University of Occupational and Environmental Health,Japan. All Rights Reserved.

bottom of page