(文献紹介17)食品を扱う人の21年間 ― イタリア・トリエステの記録
厨房、製パン、製菓、食品工場。食品を扱う仕事で、皮膚と呼吸器に何が起きているのか。
イタリア・トリエステ大学の産業医学部門が、2002年から2022年までの21年間に、職業性アレルギーを疑われて紹介された食品取扱者のデータをまとめました。
【皮膚:半分以上に何かが起きていました】
職業性の皮膚疾患があったのは 58.1%。内訳です。
・刺激性接触皮膚炎:22.9%
・アレルギー性接触皮膚炎:20%
・タンパク質接触皮膚炎:15.1%
そして、女性のほうが多いという結果でした(オッズ比3.3)。
【職種で中身が変わります】
タンパク質接触皮膚炎の割合が高かったのは、
・製菓職人:20.6%
・パン職人:17.7%
いずれも主な原因は小麦粉でした。粉を素手で扱い、生地をこねる仕事です。
【皮膚だけを見ていると足りません】
同じ人たちの呼吸器の症状です。
・鼻炎:47.8%
・喘息:17.6%
プリックテストが陽性だったのは、鼻炎のある人の34.4%、喘息のある人の58.3%でした。パン職人・製菓職人は小麦粉への感作が多く(22.8%・20.6%)、小麦粉への感作のオッズ比は3.3でした。
調理師では、鼻炎43.2%、喘息12.3%。感作されていたのは大豆、エビ(スキャンピ)、ピーナッツなどの食材でした。
【この研究から読み取れること】
手荒れと鼻炎・喘息は、同じ原因から出ていることがあります。
「手はかぶれ、鼻はアレルギー性鼻炎」と別々に扱われて、どちらも職業性だと気づかれない。この研究が示しているのはそこです。
著者らの結論も、予防習慣の改善とアレルゲンへの曝露を避けることに、もっと力を入れるべきだというものでした。
【現場でできること】
・粉を舞わせない。ふるいの位置、袋の開け方、換気
・生地を素手で長時間こねる工程を分担する
・仕事中の鼻水・くしゃみ・咳を「風邪」で片づけない
・手の症状と呼吸器の症状が同じ日に出ていないか記録する
・症状が休日に軽くなるなら、それは職業性を疑う根拠になります
休みの日に良くなる、というのがいちばん分かりやすいサインです。心当たりがあれば、記録を持って受診してください。
関連記事:(職業別)調理師/あつかうもの別-魚介類/あつかうもの別-野菜・果物/(文献紹介4)食品と職業性接触蕁麻疹
【参考文献】
Granzotto J, et al. A 21-Year Perspective on Occupational Skin and Respiratory Diseases Among Food Handlers. Med Lav 2025;116(4):17079.
Vester L, et al. Occupational food-related hand dermatoses seen over a 10-year period. Contact Dermatitis 2012;66(5):264-270.
Barbaud A. Mechanism and diagnosis of protein contact dermatitis. Curr Opin Allergy Clin Immunol 2020;20(2):117-121.
Mahler V. New allergens for occupational dermatology? Hautarzt 2021;72(6):474-483.

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