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(文献紹介16)漁師の皮膚に何が起きているか ― 25の研究をまとめた総説

natsuko-saito
9月13日
読了時間: 3分

世界で漁業と養殖に携わる人は、およそ6000万人。その多くが、陸の仕事とはまったく違うものに触れています。

フランスのグループが、海に出る漁業者の職業性アレルギーについて、25本の研究をまとめた総説を出しました。うち15本が喘息、10本が皮膚の報告です。

【何が原因になっていたか】

喘息の原因として挙がったのは、次のものでした。

・カニ

・アニサキス

・ソフトコーラル(サンゴの仲間)

・イカ・コウイカ

いずれも「魚そのもの」ではありません。一緒に網に入ってくるもの、魚に付いているものが原因になっています。

皮膚のほうで最も多かったのは、北海の漁師に起きるコケムシによる湿疹でした。網や漁具に付着した小さな生物が原因で、古くから「ドッガーバンク痒疹」と呼ばれてきたものです。

また、水産物の変色を防ぐために使われるメタ重亜硫酸塩による刺激性の喘息も報告されていました。

【リスクを上げていたもの】

著者らは、空気中のアレルゲン濃度と、冷たい空気を主なリスク要因として挙げています。

甲板の上は、濡れていて、寒くて、風があります。手も気道も守られにくい環境です。

【日本を含むアジアからの報告は、ほとんどありません】

この総説がはっきり指摘しているのは、漁業が盛んな国ほど報告が少ないということです。集まった研究のほとんどはヨーロッパの症例報告でした。

漁業者が少ないから報告がないのではなく、受診と診断につながっていないと考えるほうが自然です。

【関連して知っておきたいこと】

サケの加工工場で働く59歳の方が、喘息・鼻炎・接触蕁麻疹を同時に起こした症例が報告されています。主な原因は魚のタンパク質(パルブアルブミン)でしたが、甲殻類のトロポミオシンや保存料・香辛料も関与しうるとされています。

また、動物性食品による職業性アレルギーの総説では、魚よりも甲殻類と軟体動物のほうが原因になりやすいと述べられています。

【現場で気をつけること】

・手だけでなく、咳・鼻水・息苦しさが仕事中に出ていないかを併せて見る

・「魚は食べられるのに触ると出る」ときは、アニサキスやコケムシなど別のものを疑う

・症状が出た日の作業内容(魚種、網の扱い、加工工程)を記録しておく

・冷たい水と風にさらす時間を減らす。手袋と袖口の管理

漁業の現場は受診が後回しになりがちです。手が荒れて当たり前という前提を、いったん外してみてください。

関連記事:あつかうもの別-魚介類/(文献紹介4)食品と職業性接触蕁麻疹/職業別-調理師

【参考文献】

Lucas D, et al. Occupational allergic diseases among harvesting fishermen on the open sea: A systematic review. Ann Allergy Asthma Immunol 2023;131(2):253-265.

Lucas D, et al. Occupational asthma, rhinitis and contact urticaria in a salmon-processing worker. Int Marit Health 2022;73(3):112-114.

Dickel H. Exceptional occupational allergies due to food of animal origin. Hautarzt 2021;72(6):493-501.

Zarnowski J, Treudler R. Food allergy as occupational disease. Dermatologie 2025;76(7):414-421.

Jeebhay MF, et al. Occupational seafood allergy: a review. Occup Environ Med 2001;58(9):553-562.

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