あつかうもの別:花 ― 球根は刺さる、サクラソウは触らなくても出る
生花店、園芸店、葬儀の生花、温室での栽培。それに、家庭のガーデニング。
花で手が荒れるとき、原因は「かぶれ」だけではありません。刺さって荒れるもの、触れずに顔に出るもの、日に当たって悪くなるものが混ざっています。
どの花で、体のどこに出るか。そこから原因に近づけます。
【球根は、かぶれる前にまず「刺さる」】
ヒヤシンスやスイセンの球根と汁には、シュウ酸カルシウムの針のような結晶が含まれます。
これはアレルギーではありません。針が皮膚に刺さって起こる刺激です。つまり体質に関係なく、扱えば誰にでも起こります。ヒヤシンスの球根を素手で扱うと、ほとんどの人がかゆくなります。
スイセンによるものは古くから「lily rash」と呼ばれ、花屋の刺激性接触皮膚炎としては最も多いものとされています。
大事なのは、この場合パッチテストは陰性だということです。「検査で異常なし」と言われても、原因がないわけではありません。
〈出かたの特徴〉
・球根の仕分けや切り分けをした手に出る
・かゆみ、赤み、乾燥、ひび割れ。強いと水ぶくれ
・扱った時期に悪くなり、シーズンが終わると軽くなる
【チューリップとアルストロメリアは、アレルギー】
同じ球根でも、チューリップとアルストロメリア(ユリズイセン)は仕組みが違います。チュリパリンAという物質による、本当のアレルギーです。
爪の周りと、親指・示指の先に出ます。詳しくは「職業別:花屋・造園」に書きました。
ここで付け加えておきたいのは、仕事の人だけではないということです。自宅の庭でアルストロメリアを扱っていた65歳の女性が、重いアレルギー性接触皮膚炎を起こした報告があります。パッチテストでアルストロメリアとチュリパリンAが強陽性でした。
趣味の園芸でも起こります。「仕事ではないから」は理由になりません。
ニトリル手袋が有効です。
【サクラソウは、触らなくても出ることがあります】
プリムラ・オブコニカ(西洋サクラソウ)に含まれるプリミンは、古くから知られた強いアレルゲンです。
特徴的なのは、株を傷つけなくても、プリミンが空気中に出ていることです。無傷の鉢植えからも放出されていることが、実際に測定されています。
そのため、手ではなく顔・首・まぶたに出ることがあります。鉢を置いた部屋、店頭、事務所の窓辺。「触っていないのに」と言われる典型がこれです。
なお、プリミンを含まない品種が広まったことで、ヨーロッパではプリミンのアレルギーは減ってきたという報告があります。鉢を選ぶときは品種の表示を見てください。
【キク科は、花屋でも、葬儀でも、農家でも】
キク、ガーベラ、マーガレット、ナツシロギク、除虫菊。原因物質はセスキテルペンラクトンです。
この物質はレタス、春菊、ゴボウ、チコリーにも含まれます。花で感作された人が、あとから青果や厨房で手が荒れる。その逆もあります。
もうひとつ、日本からの報告で覚えておきたいものがあります。菊農家の方が、菊に含まれるアラントラクトンでかぶれ、さらに光線過敏を合併していた例です。かぶれと「日に当たると悪くなる」が重なることがあります。
屋外で菊を扱っていて、顔や手の甲だけが強く出る人は、この可能性があります。
【触れて数分でかゆい、くしゃみが出る、なら即時型】
花屋で、キク科の花粉によって接触蕁麻疹を起こし、あとから喘息の症状も出た報告があります。
触れて数分でかゆみやみみず腫れが出る。鼻水やくしゃみが一緒に出る。この場合は遅れて出るかぶれとは別のものです。
パッチテストではなくプリックテストが要ります。皮膚だけの問題として扱うと、気道の症状を見落とします。
【どの花が原因になっているか】
フィンランドの職業病研究所が、14年間に職業性のアレルギー性接触皮膚炎と診断した観賞植物の症例12人をまとめています。
原因になった植物は、
・キク科(キク、オオグルマ、ガーベラ、ナツシロギク)
・アルストロメリア
・ユリ科(チューリップ、ヒヤシンス)
・ヒガンバナ科(スイセン)
・ナデシコ科(カーネーション)
でした。平均13年その仕事をしてから発症しています。そして12人のうち5人は症状が重く、その仕事を続けられませんでした。
長く続けた人ほど出る、ということです。出てからでは遅いという数字だと思っています。
【現場でできること】
・球根の仕分け・切り分けは素手でやらない。ヒヤシンスとスイセンは刺激なので、体質に関係なく手袋が要る
・チューリップ、アルストロメリアの下処理にはニトリル手袋
・サクラソウの鉢は、顔の高さ・風上に置かない。顔だけの症状は、触っていなくても疑う
・水替えのあと、乾く前に保湿する
・屋外で菊を扱うなら、日に当たる部分を覆う
・触れて数分で出るなら、パッチテストではなくプリックテストが要ると伝える
・症状が出た時期に何の花を扱っていたかを記録する。花は季節で変わるので、これが最も強い手がかりになります
【最後に】
花の皮膚炎は、「かぶれやすい体質かどうか」より、何を、どれだけの期間扱ってきたかで決まります。
12人中5人が仕事を続けられなかった、という数字は重いものです。荒れはじめの段階で、何を扱っているかを見直してください。
関連記事:職業別-花屋・造園/あつかうもの別-野菜・果物/職業別-農業/(水仕事)「手荒れ」
【参考文献】
Bruynzeel DP. Bulb dermatitis. Dermatological problems in the flower bulb industries. Contact Dermatitis 1997;37(2):70-77.
Lee KP, et al. Botanical Briefs: Daffodils (Narcissus Species). Cutis 2023;111(1):41-45.
Lamminpaa A, et al. Occupational allergic contact dermatitis caused by decorative plants. Contact Dermatitis 1996;34(5):330-335.
Tavares B, et al. Home gardening may be a risk factor for contact dermatitis to Alstroemeria. Allergol Immunopathol (Madr) 2006;34(2):73-75.
Christensen LP, et al. Direct emission of the allergen primin from intact Primula obconica plants. Contact Dermatitis 2000;42(3):149-153.
Hassan S, et al. Botanical Briefs: Primula obconica Dermatitis. Cutis 2023;111(3):138-139.
Connolly M, et al. Primula obconica - is contact allergy on the decline? Contact Dermatitis 2004;51(4):167-171.
Kuno Y, et al. Allergic contact dermatitis associated with photosensitivity, from alantolactone in a chrysanthemum farmer. Contact Dermatitis 1999;40(4):224-225.
Uter W, et al. Occupational contact urticaria and late-phase bronchial asthma caused by compositae pollen in a florist. Am J Contact Dermat 2001;12(3):182-184.
Marks JG Jr. Allergic contact dermatitis to Alstroemeria. Arch Dermatol 1988;124(6):914-916.


コメント