あつかうもの別:切削油(続編)― 何が原因になり、現場で何ができるか
切削油(金属加工油)は、金属を削る・穴をあける・研磨するときに使う油です。刃と材料を冷やし、摩擦と摩耗を減らすために欠かせません。その一方で、手が一日じゅう触れ続ける液体でもあります。
【まず、どれくらい起きているのか】
インド・ベンガルールの6工場で、切削油を扱う205人を調べた調査があります。
職業性皮膚炎があったのは 15.4%。症状の内訳は、
・乾燥:14.6%
・かゆみ:14.6%
・赤み:13.2%
・出血:6.3%
・切り傷・裂け:5.9%
「かゆい」より先に「乾く・切れる」が来るのが、この仕事の手荒れの特徴です。
【関係していたのは、体質ではなく作業条件でした】
皮膚炎の有無と有意に関係していたのは、次の項目でした。
・年齢
・勤続年数
・どの加工工程を担当しているか
・機械が囲われている(カバーがある)かどうか
・手袋を使っていないこと
後ろの2つは、本人の努力ではなく職場の設備と支給の話です。著者らの結論も、教育・保護具の支給・工学的対策(囲い込みと換気)・健康管理を組み合わせるべきだ、というものでした。
【原因には2つの道筋があります】
ひとつは刺激性です。油そのものが皮膚の脂を奪い、水溶性の切削油はアルカリ性に傾きます。そこに金属の切り粉による細かい傷が重なります。多くはこちらです。
もうひとつがアレルギー性で、原因になるのは油そのものより添加物です。近年の報告で名前が挙がっているものを挙げます。
・乳化剤・防錆剤のアミン類:モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、シクロヘキシルジエタノールアミン、トリメチロールプロパンポリオキシプロピレントリアミン
・防腐剤:ホルムアルデヒドとホルムアルデヒド遊離剤、ベンズイソチアゾリノン類、メチルイソチアゾリノン
・コロホニウム(ロジン)
・金属:コバルト、ニッケル、クロム
いずれも、製品によって入っているものが違います。とくにアミン類のモノエタノールアミンは、ドイツの切削油シリーズで一貫して最多の陽性率を示しています。
【空気中に舞って、顔や首に出ることがあります】
イタリアからは、メチルイソチアゾリノンを含む切削油で、空気を介した接触皮膚炎を起こした報告が出ています。
手袋をしていても、細かいミストが顔・首・まぶたにつけば症状が出ます。手だけを見ていると原因を取り違えます。
【金属そのものへのアレルギーも重なります】
スペインから報告された金属加工作業者10人の検討では、手・前腕・首・顔に皮膚炎が出ており、コバルトとニッケルへの陽性が目立ちました。切削油の添加物への感作も併せて見つかっています。
働き始めてから発症するまでの期間は、数か月から数十年までさまざまでした。そして、完全に治ったのは配置転換ができた人が中心だったと述べられています。
【現場でできること】
・機械の囲いと局所排気。ミストを浴びない工程にする
・切削油の管理(濃度・pH・交換)。腐敗した油は刺激が強くなり、防腐剤も足されがちです
・手袋を使える工程では使う。ただし回転する機械のそばでは巻き込みの危険があるため、手袋を使えない工程があります。その場合は囲いと洗浄・保湿で守ります
・切削油やシンナーで手を洗わない。専用の手洗い剤を使う
・作業後、手が乾く前に保湿する
・切れて痛むようになったら、悪化する前に受診を
早く原因が分かれば、仕事を変えずに済むことが多くあります。逆に、長く放っておくほど「配置転換しか手がない」状態に近づきます。手が荒れてきた時点が、いちばん動きやすいタイミングです。
何をどう調べるのかは、別記事「(文献紹介15)切削油のかぶれを疑ったら、何を調べるか」で詳しく書いています。
関連記事:(文献紹介15)切削油のかぶれを疑ったら、何を調べるか/あつかうもの別-切削油/扱うもの別-手袋/職業別-自動車工場
【参考文献】
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