職業別:メッキ作業・化学工場 ― 六価クロムは、かぶれだけでは終わりません
メッキ、金属表面処理、化学工場。この仕事の皮膚の問題は、「かぶれ」と「傷」の2つに分けて考える必要があります。
【1つめ:かぶれ(アレルギー性接触皮膚炎)】
原因になる金属は、クロム、ニッケル、コバルトです。
メッキ槽、めっき液、めっき後の製品、そして工具。手だけでなく、ミストを浴びる工程では顔にも出ます。
金属と職業の関係は、別記事「文献紹介3: ニッケル、コバルト、クロムアレルギーと職業の関連性」で扱っています。
エポキシ樹脂も、化学工場では主要な原因のひとつです。フィンランドの職業病登録では、アレルギー性接触皮膚炎の原因の29%が樹脂・プラスチック関連で、その多くがエポキシでした。
【2つめ:クロム潰瘍(chrome ulcer)】
これがこの職種に特有のもので、かぶれとは別のものです。
六価クロムは強い腐食性を持ちます。皮膚に付くと、円形で、周囲が盛り上がり、中央がくぼんだ、痛みの少ない潰瘍をつくります。「クロム孔(chrome holes)」とも呼ばれます。
・手の甲、指の関節、爪の周りなど、もともと小さな傷がある場所にできます
・かゆみではなく、治らない傷として現れます
・数週間から数か月かかって、ゆっくり深くなります
小さな切り傷がある日は、めっき液に触れる作業を避ける。これが最も確実な予防です。
【3つめ:鼻と気道】
六価クロムの曝露で、鼻の粘膜の潰瘍と、鼻中隔穿孔が起こります。皮膚より先に鼻に出ることがあります。
・鼻がいつも詰まる、鼻血が出る、かさぶたが取れない
・これらは早期のサインです
さらに、六価クロムは肺がんの原因物質として国際がん研究機関(IARC)に認められています。喘息やCOPDとの関連も指摘されています。
「手が荒れる」だけの問題ではない、というのがこの職種の要点です。
【4つめ:酸・アルカリによる化学熱傷】
めっき前処理の酸洗い、脱脂のアルカリ。付着すると化学熱傷になります。
とくにフッ化水素酸は、痛みが遅れて出てくるため、気づいたときには深く進んでいることがあります。扱う職場では専用の対応手順が必要です。
【現場でできること】
・傷があるときは、めっき液に触れる作業から外れる
・局所排気とミスト対策。ふちに立たない
・保護手袋・前掛け・眼の保護。手袋の内側が濡れたら替える
・作業後の洗浄。爪の間まで
・鼻の症状(詰まり、鼻血、かさぶた)を軽く見ない
・健康診断の結果を、皮膚と鼻の症状と合わせて見る
【受診するときに伝えること】
・扱っている金属と薬品の名前(SDSを持参できればいちばん確実です)
・傷ができた場所と、その前に何に触れたか
・鼻や咳の症状の有無
治らない傷があるなら、それは「不器用だから」ではありません。仕事の内容を必ず伝えてください。
関連記事:文献紹介3: ニッケル、コバルト、クロムアレルギーと職業の関連性/職業別-自動車工場/あつかうもの別-エポキシ樹脂・接着剤/パッチテストパネル-重クロム酸カリウム
【参考文献】
Hessel EVS, Ezendam J. Occupational exposure to hexavalent chromium. Part I. Hazard assessment of non-cancer health effects. Regul Toxicol Pharmacol 2021;126:105048.
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Bhatia R, Sharma VK. Occupational dermatoses: An Asian perspective. Indian J Dermatol Venereol Leprol 2017;83(5):525-535.
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