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あつかうもの別:野菜・果物 ― 指先だけが荒れる、日光で悪くなる

natsuko-saito
9月12日
読了時間: 5分

青果店、給食室、厨房の仕込み、選果場。野菜と果物を毎日刻む人の手には、他の仕事とは少し違った荒れ方が出ます。

「指先だけ」「日光に当たった側だけ」といった、場所の偏りが手がかりになります。


【指先だけが荒れるなら、ニンニクとタマネギを疑います】


指先の皮膚炎53人を調べた古典的な研究では、パッチテストで陽性になった野菜は、多い順にニンニク・タマネギ・トマト・ニンジンでした。


ニンニクの主な原因物質はジアリルジスルフィドです。特徴的なのは出る場所で、ニンニクを押さえるほうの手の、親指・示指・中指の先に出ます。皮がむけ、ひび割れ、ときに水ぶくれになります。


やっかいなのは、この物質が市販の手袋の多くを透過してしまうことです。手袋をしていても防ぎきれません。


・刻む作業を器具に置き換える(フードプロセッサー、ガーリックプレス)

・皮をむいたもの、刻んだものを使う

・同じ人が毎日ニンニクの仕込みをしない


といった、作業そのものを変える対策が要ります。


なお、ニンニクはアレルギー性接触皮膚炎と、触れて数分で出るタンパク質接触皮膚炎の両方を起こします。調理師の報告例では、この2つが同じ人に併存していました。


【レタスやチコリーは「キク科」です】


レタス、チコリー、エンダイブ、春菊、ゴボウはキク科の植物です。原因物質はセスキテルペンラクトンで、花屋や園芸の仕事で問題になるものと同じです。


デンマークの園芸・温室作業者250人を調べた研究では、25人にキク科アレルギーが見つかり、キク・デイジー・レタスが多い感作源でした。青果店で働く人が、緑の葉物を扱うと手に水ぶくれが出るようになり、セスキテルペンラクトンが陽性だった報告もあります。


花屋の仕事の経験がある人が青果の仕事で手が荒れる、という組み合わせは珍しくありません。


【セロリと柑橘は、日光と組み合わさります ― 光線過敏】


セロリ、パセリ、パースニップ、ニンジン、フェンネルなどのセリ科。ライム、レモン、ベルガモット、グレープフルーツなどのミカン科。それにイチジクの葉と枝から出る乳液。これらにはフロクマリン(ソラレン)という物質が含まれます。


これは、いわゆる「かぶれ」とは仕組みが違います。フロクマリンがついた皮膚に紫外線(とくにUVA)が当たると、その場で細胞が傷つきます。免疫の記憶を必要としないので、体質に関係なく、誰にでも、初めて触れた日でも起こります。同じ作業をした人に一斉に出るのは、このためです。


〈出かたの特徴〉


・触れた直後は何も起きません。赤みが出るのは翌日ごろ、いちばん強くなるのは2〜3日後です

・形が不自然です。汁が飛んだ跡、垂れた線、押さえた指の跡が、そのまま皮膚に残ります

・強いと水ぶくれになり、やけどのように見えます

・赤みが引いたあと、茶色い色素沈着が数週間から数か月残ります。年単位で残ることもあります

・日光の当たった範囲にぴったり一致します。まくった袖の先、手の甲、日焼け止めを塗り忘れた側だけ


〈職場で起きやすい場面〉


・青果売り場、給食室、厨房でセロリやパセリを大量に刻む

・バーでライムやレモンを切る(「マルガリータ皮膚炎」と呼ばれます)

・草刈り、造園、農作業でセリ科の草の汁を浴びる

・仕込みや販売を屋外でおこなう


アメリカの食品スーパーで起きた集団発生では、従業員127人のうち30人に発疹が出ました。青果担当者に限ると8人中8人、全員です。原因は、病気にかかって傷んだセロリでフロクマリンの濃度が高くなっていたことでした。傷んだセロリ、カビの生えたセロリは危険が上がります。


〈見逃されやすい理由〉


パッチテストは陰性です。この病気はパッチテストでは診断できません。手がかりは「何を触ったか」と「そのあと日に当たったか」の2つだけです。しかも1日の時間差があるため、本人も結びつけられません。原因不明のかぶれ、やけど、虫刺されとして扱われて終わることがよくあります。


〈起きたときと、防ぎ方〉


・汁がついたら、日光に当たる前に石けんで洗い流す

・屋外の作業は長袖。日焼け止めはUVAを防ぐもの(PA表示のあるもの)を選ぶ

・傷んだセロリを素手で扱わない

・出てしまったら冷やす。水ぶくれは破らない。範囲が広いとき、痛みが強いときは受診する

・色素沈着が残っている間は、その部分を日に当てない。時間はかかりますが薄くなります


屋外作業やバーベキュー、屋外イベントのあとに出た場合は、受診時にその話を必ず伝えてください。診断がそこで決まります。


【触れて数分でかゆくなるなら、即時型です】


キウイ、モモ、リンゴ、バナナ、マンゴー、トマトなどは、触れて数分でかゆみ・赤みが出ることがあります。職業性の接触蕁麻疹をまとめた総説でも、野菜と果物は魚介類・肉と並ぶ主な原因として挙げられています。


この場合もパッチテストは陰性です。新鮮な食材を使うプリックテストが要ります。


【現場でできること】


・刻む作業は器具に置き換える。手で直接押さえる時間を減らす

・手袋は有効な場面もあるが、ニンニクには過信しない

・汁がついたら、日光に当たる前に洗い流す

・屋外での仕込み・販売のときは、腕まで覆う

・水仕事のあと、乾く前に保湿する

・出る場所(指先だけ、日光の当たる側だけ)を覚えておいて、受診時に伝える


野菜・果物のかぶれは、何を触ったかより「どの指が」「いつ」荒れるかで原因に近づけます。写真を撮っておくと診断が早くなります。


関連記事:あつかうもの別-魚介類/(文献紹介4)食品と職業性接触蕁麻疹/職業別-調理師/職業別-花屋・造園


【参考文献】


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