あつかうもの別:化学物質 ― 皮膚に付く物質には、手袋が「義務」になりました
2024年4月から、職場の化学物質と皮膚のルールが変わりました。
皮膚に障害を与える化学物質を扱うときは、化学物質を通さない手袋などの保護具を使わせることが、事業者の義務になりました(労働安全衛生規則 第594条の2)。
それまでは一部の物質を除き「着けたほうがよい」でした。いまは「着けなければならない」です。
【対象になる物質】
「皮膚等障害化学物質」と呼ばれ、2つの種類があります。
・皮膚刺激性有害物質:皮膚や眼に障害を与えるもの。化学熱傷や接触皮膚炎など
・皮膚吸収性有害物質:皮膚から吸収されて、全身に影響するもの。意識障害、臓器の障害、発がんなど
前者は、SDSで「皮膚腐食性・刺激性」「眼に対する重篤な損傷性・眼刺激性」「呼吸器感作性又は皮膚感作性」のいずれかが区分1のものです。皮膚感作性、つまりアレルギー性のかぶれを起こす物質も含まれます。
後者は国が一覧で定めています。2025年11月に見直され、296物質になりました。
注意したいのは後者です。皮膚吸収性の物質は、皮膚が赤くならないまま体に入ります。皮膚から吸収されて膀胱がんに至った事例も報告されています。「かぶれないから大丈夫」とは言えません。
対象外の化学物質でも、明らかに害がないもの以外は、保護具を使うよう努めることとされています(第594条の3)。
【うちの職場は対象? SDSで確かめます】
化学製品には、SDS(安全データシート)という書類があります。次の順に見てください。
①「15. 適用法令」に「皮膚等障害化学物質等」と書いてあるか
②「2. 危険有害性の要約」で、上の3つのどれかが区分1か
③どちらもなければ、「3. 組成、成分情報」の成分名を、皮膚吸収性有害物質の一覧と照らし合わせる
どれかに当てはまれば、対象です。
【軍手や、ふつうのビニル手袋では足りません】
必要なのは「化学防護手袋」です。JIS T 8116(海外製品なら ASTM F739、EN ISO 374)に適合したものを選びます。
実際の労働災害では、水酸化ナトリウムを含む液を扱う作業で、一般のビニル手袋を使っていて薬傷になった例があります。
手袋は、物質によって通しやすい材質、通しにくい材質が違います。同じニトリル手袋でも、厚さで性能が変わります。
【選ぶときに考えること】
①扱う物質は何か
②どのくらい触れるか(手を浸す・ウエスで拭く/指先に付く・飛沫がかかる/ふだんは触れない)
③作業時間はどのくらいか(60分以下/60〜240分/240分超)
作業時間は「触れている時間」ではなく、手袋を着けてから外すまでの時間です。
これをもとに、厚生労働省のマニュアルの「耐透過性能一覧表」で使える材質を探します。複数の物質が混ざった製品では、2種類の手袋を重ねる方法もあります。
【使うときの注意】
・着ける前に、空気を入れて穴がないか確かめる
・爪を短くし、手の傷を確認する
・決めた使用時間を守る。傷が付いた手袋は、見た目がきれいでも交換する
・袖口から入らないよう、必要なら袖口をテープで止める
・外すときは、汚れた面が内側になるように脱ぐ
・使った手袋は一般ごみにしない
【手袋そのものでかぶれることもあります】
ゴム手袋の加硫促進剤や、天然ゴム(ラテックス)でかぶれる人がいます。保護具の着用が義務になった分、手袋によるかぶれも増える可能性があります。
手袋をしてから手が荒れるようになったら、化学物質が透過しているのか、手袋に反応しているのかを分けて考える必要があります。これはパッチテストで調べられます。
別記事「あつかうもの別:手袋」もご覧ください。
【最後に】
厚生労働省の資料では、化学物質による労働災害の事例のうち、皮膚に付いたことによる皮膚障害が最も多いとされています。
吸い込まないための対策に比べて、皮膚の対策は後回しにされがちでした。手荒れやかぶれが続く人は、扱っている物質のSDSを持って皮膚科を受診してください。
関連記事:あつかうもの別-手袋/あつかうもの別-有機溶剤/(水仕事)「手荒れ」
【参考文献】
厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署. 皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル(概要). 2025年3月.
厚生労働省. 皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル 第3版. 2026年3月.
厚生労働省労働基準局長. 皮膚吸収性有害物質に該当する化学物質等について(基発1118第2号). 2025年11月18日.
職場のあんぜんサイト. 皮膚等障害化学物質(物質リスト).

コメント